アメリカは、世界最大の「輸入国家」です。
輸入が多い国、というのばもちろん「国内での消費が多い国である」と言えます。
アメリカ国内の消費が多ければ多いほど、アメリカへの輸出量が多い国も景気が良くなっていくのです。
「経済指標」と言っても多くの指標が発表されるので、すべてを確認するのは個人では不可能ですが、ここでは最大限注目すべきアメリカの経済指標の内、一般消費に関する5つの指標について確認してみたいと思います。
ポイント
一般消費者の動向を判断できる経済指標
アメリカ国内総生産の約7割を個人消費が占める
雇用統計
まずは、何と言ってもアメリカ国内でどのくらいの人が就業、あるいは失業してしまったか、働いている人たちの所得状況はどうかなどを測る
「雇用統計」
が重要となってくるでしょう。
「雇用統計」は各国で発表されますが、特に基軸通貨国であるアメリカの統計は、株価や為替などにも多大な影響を及ぼすために投資家としては注目する必要があります。
アメリカの「雇用統計」は毎月1回、米国労働省によって発表されます。
1ヶ月の間に、どれくらいの人たちが新たに職に就いたかを示す「就業者数」と、労働人口のうち職を失った人たちの割合を示す「失業率」、「平均時給」など10項目の統計が発表されます。
中でも重要なのが、「非農業部門雇用者数」と「失業率」の2つとなります。
非農業部門雇用者数
「非農業部門雇用者数」は、農業以外の仕事をしている人たちの数値となり、一般的な就業者数の統計となります。
この数値が上がれば、景気が良くなっていると考えられ金利も上がっていきます。さらにインフレ傾向で物価も上がれば、雇用がますます増え、さらに景気が良くなるというスパイラルが生まれます。
FRB(米連邦準備制度理事会)も特に注目している指標であり、金融政策にも影響を与えます。
景気が悪い状態の時であれば、就業者数が増加し失業率が減少すると、「雇用統計の数値に改善が見られた」となり、景気回復の期待となります。
インフレ時には・・
失業率
労働力人口に占める失業者の割合を示したのが、この「失業率」になります。
「失業率」もFRBが非常に注目している指標で、こちらも金融政策に影響を与えています。
ただし、「失業率」は、「早期引退」や「専業主婦に戻る」などの理由で働く気がなくなってしまった職を探していない人たちは含まれません。
「失業率」が減った場合は、単純に雇用が順調で失業者が減り「失業者」が減ったのか、リタイア組が増えて「失業率」が減ったのかが判断付きにくいのです。
そこで失業者が増えたかどうかを判断する指標として、同じ雇用統計の「労働参加率」が重要となってきます。
【労働参加率=労働力人口(就業者+失業者)÷生産年齢人口(15歳から64歳までの病院や刑務所などの施設に入って働けない人を除いた人口)】
失業者が新たな職に就いても、失業者が就業者に移動するだけなので「労働力人口」は変わりません。
しかし、職探しをしていた失業者がリタイア組になってしまった場合は、失業者にカウントされないので、単純に「労働力人口」が減ってしまう要因となります。
「労働力人口」が減少する、それがすなわち「労働参加率の低下」と言う形で表れてきます。
「失業率」と「労働参加率」が共に低下した場合は、リタイア組が増えて失業者が減っただけであり『失業率が減ったから雇用が改善されたわけではない』と言えるのです。
平均時給
農業部門以外の主要産業において1時間当たりの賃金の増減を表したものになります。
雇用の拡大局面や労働力の売り手市場の時には、平均時給が増加します。
「物価上昇→給与アップ→物価上昇」の正のスパイラルで、景気が良いと判断され、
逆に「物価下落→給与ダウン→物価下落」の負のスパイラル時には、景気が悪いと判断されます。
「非農業部門雇用者数」や「失業率」と同じく、FRBの金融政策において重要な指標となります。
メモ
発表:アメリカ労働省
時期:毎月第一金曜日、日本時間21:30
消費者物価指数
「雇用統計」と同じくらい、重要な指標がこの
「消費者物価指数」
となります。
これは、日本の消費者物価指数もニュースなどでよく扱われる指標ですね。
経済活動が活発になればなるほど、物(もの)の値段は高くなり、サービス料などもそれと合わせて高くなっていきます。
つまり、これが「物価が上がる」という意味であり、物価が上がっている時は景気が良い時であると言えます。
アメリカの「消費者物価指数」は、約5,000の家庭と2,000以上の品目を対象に毎月1回、労働省によって発表されます。
「消費者物価指数」を見る際には注意すべき点があり、それは景気のいい悪いに関係なく物価上昇のタイミングがある点です。
日本でもよくありますが、天候などの災害によって作物が収穫不足になると、物価が上がる傾向にあります。
同じように、アメリカも災害の多い季節では、このような作物の作付けや収穫不足により景気とは関係のない物価上昇が発生する時もあるのです。
さらに、原油などの燃料も景気とは関係なく、新興国の成長や投機筋による操作で価格が高騰します。
物価が高騰した時には、これらの情報も合わせて確認しておく必要があるでしょう。
消費者物価指数は「前年同月比」などでよく比較されます。
アメリカの場合、消費者物価指数が上がりやすいクリスマス頃の季節は、その季節の前年比で見てみると景気が良くなっているかどうかを判断しやすくなります。
メモ
発表:アメリカ労働省
時期:毎月15日頃、日本時間21:30
小売売上高
「消費者物価指数」と同じタイミングで発表される「小売売上高」にも注目しておきたいところです。
「小売売上高」は、米国内で販売されている小売業・サービス業の売上高を表す指標となります。
各国で発表され、どの国でもだいたい同じ割合となりますが、アメリカでは個人による消費が国内総生産の約7割を占めています。
そのため、売上高が上がれば景気がよくなっていると判断できますが、短期の景気判断には向いていません。
「消費者物価指数」でも書いたように、景気とは関係なくアメリカのクリスマスシーズンは消費量が増えるので、通年や同月比など長期的な判断指標として使った方が良いでしょう。
メモ
発表:アメリカ商務省
時期:毎月15日頃、日本時間21:30(消費者物価指数と同じタイミング)
まとめ今回は3つ
さて、まずは一般消費者が関連する経済指標を3つ確認してみました。
日本国内の統計としても使われる指標なので、ニュースや新聞等でもよく出てくるワードですよね。
- 雇用統計(非農業部門雇用者数)
- 雇用統計(失業率)
- 雇用統計(平均時給)
- 消費者物価指数
- 小売売上高
各国で発表されますが、消費大国であり世界の中心であるアメリカのこれらの指標は、米国や国内の株式はもちろん、株式投資にも十分な影響力を持っています。
投資を始めて間もない方は、まずこの経済指標の意味と数値の増減が何を意味するのかを理解しておいてください。