景気、物価、金利の関係は本来、以下のようになります。
- 景気が良くなると、物価も上がり金利も上がる
- 景気が悪くなると、物価も下がり金利も下がる
しかし、景気が悪くなっているにもかかわらず、物価も金利も下がらない場合があります。
これを「スタグフレーション」といいます。
”不況”という意味の「スタグネーション」と”物価上昇”という意味の「インフレーション」を合わせた言葉です。
景気が悪くなる時の「デフレ」状態では、物価が下がり企業収益が減るために失業者が増え、金利も下がるという流れでしたね。
ただし、デフレ下では、物価が下がるとはイコールお金の価値が上がるという意味になるので、お金を持っている富裕層の人は、”物価が安いうちにモノを購入してしまおう”、となります。
また、保険や年金などの手当てがある人には、デフレによる物価の下落は生活を楽にしてくれるものになります。
しかし、ひとたび「スタグフレーション」になると、景気が悪くなっているのに物価が上昇してしまうので、消費が生まれないのに物価が上がり(通貨価値が下がり)、ますます消費が冷え込み景気が悪くなる状態となります(しかし、物価はじわじわ上がっていく)。
物価が上がるので、富裕層も消費を控え、ますます景気が底冷えするようになるのです。
実は、アメリカでは2010年の景気が悪かった時期に、このスタグフレーションを引き起こす可能性がありました。
それは、なぜかと言うと、景気が悪くて中央銀行が大量のドル紙幣を印刷したからです。
大量に刷られた紙幣は国債購費用として市中にばらまかれ、ドルが飽和状態となり、そのドルを使ってエネルギー資源などを購入したため、物価上昇が発生したのです。
結果、景気が悪く量的緩和をしたのに、ドルが思わぬ方向に向かい物価上昇を招き金利が高くなってしまうという「スタグフレーション」が発生したわけです。
景気が悪いからと言って、安易にドル紙幣を印刷すると、このようなさらに景気を悪くしてしまう状況を産み出してしまう恐れもあるのです。
では、日本でスタグフレーションとなった時期はあったのでしょうか。
実は、日本にも1970年代のオイルショックの際に、このスタグフレーションが発生しています。
結果として、第一次オイルショックと言われる1973年から1974年にかけて物価が上がりすぎた(インフレ)ために、政府による引き締めで戦後の高度経済成長がとうとう終焉となり、その後の国債の大量発行へとつながりました。