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リスクを緩和する債券ETFの種類と債券投資信託との比較

前回、業種別に特化したETFである「セクターETF」から「米国セクターETF」や「グローバルセクターETF」について見てきました。

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さて、今回は、そもそもの投資対象が株式ではなく債券に投資をする「債券型ETF」について見ていきたいと思います。

債券型ETFとは

「債券」は、大きく分けると国が発行する「国債」と企業が発行する「社債」の2つがあります。

国の信用度、もしくは企業の信用度によって格付けがあり、投資先によってはハイリスクとなる債券もあります。

そこで利用したいのが、投資先をうまく配分してくれている「債券型ETF」となります。

「債券型ETF」には、国債や社債以外にも様々なタイプのものがありETFでは以下のような種類があります。

債券型ETFの種類

  • 国債のみに投資をする「国債ETF」
  • 「国債」や「社債」などに幅広く投資をする「総合債券ETF」
  • 信用度の高い債券を中心に投資する「投資適格債券ETF」
  • 信用度は低いがハイリターンを目指す「ハイイールド債券ETF」

今回は、各債券の中でも「米国債券」を中心に見ていきたいと思います。

米国債のみ「米国債ETF」

債券市場の中でも米国債券市場は、規模が大きいため流動性も高くなっています。

高い信用力を誇る「米国債券のみ」に投資をするETFは期間ごとに、大手の運用会社から提供されています。

SSGA バンガード ブラックロック
長期 SPTL
SPDRポートフォリオ米国長期国債ETF
VGLT
バンガード米国長期国債ETF
IEF
iシェアーズ米国国債7-10年ETF
中期 SPTI
SPDRポートフォリオ米国中期国債ETF
VGIT
バンガード米国中期国債ETF
SHY
iシェアーズ米国国債1-3年ETF
短期 SPTS
SPDRポートフォリオ米国短期国債ETF
VGSH
バンガード米国短期国債ETF
SHV
iシェアーズ米国短期国債ETF
超長期 なし EDV
バンガード超長期米国債ETF
TLT
iシェアーズ米国国債20年超ETF

運用会社3社が提供している「米国債ETF」を残存期間ごとに一覧にしたのが上の表になります。

米国長期国債ETF

「米国長期国債ETF」は、残存期間が長い債券をメインとして保有しているETFになりますが、決して短期債券を保有していないわけではありません。

以下の表で確認してみましょう。

SPTL VGLT IEF
残存期間 20~30年(64.21%)
15~20年(34.74%)
10~15年(1.05%)
0~1年(0.01%)
25年以上(43.7%)
20~25年(21.8%)
15~20年(33.4%)
10~15年(1.1%)
7~10年(96.9%)
5~7年(3.08%)
格付け AAA(100%) AAA(100%) AAA(99.98%)

※記事執筆時点

一口に「長期国債ETF」と言っても、各運用会社によって保有している期間はマチマチなのが分かりますね。

3社のうち「SSGA」だけが、「超長期国債ETF」の商品がありません。

そのため、長期国債ETFである「SPTL」の保有債券に「20~30年が6割以上含まれている」ように、このETFが長期国債と超長期国債の両方をメインに運用しています。

債券の格付けはどのETFも高いので、あとは購入時の運用実績や経費率などの判断となるでしょう。

ちなみに、「ブラックロック」の米国国債ETFは、他の2社よりも経費率が高めに設定されています。

国内ETFでも購入できる

ブラックロックの「iシェアーズ」シリーズは、東証にも上場しています。
iシェアーズ・コア 米国債7-10年 ETF(1656)
iシェアーズ 米国債1-3年 ETF(2620)
iシェアーズ 米国債20年超 ETF(為替ヘッジあり)(2621)

国内株をメインに投資している方は、「東証ETF」で米国国債を購入できるようになっています。

ちなみに、SSGAとバンガードは東証に上場している商品はありません。

米国中期国債ETF

「米国中期国債ETF」は、どの運用会社も残存期間が10年を超えるものを保有しておらず、5年前後で満期償還となる債券をメインで保有するタイプとなっています。

SPTI VGIT SHY
残存期間 7~10年(20.56%)
5~7年(29.53%)
3~5年(49.89%)
0~1年(0.03%)
5~10年(53.4%)
1~5年(46.5%)
0~1年(0.1%)
2~3年(42.69%)
1~2年(51.94%)
0~1年(5.34%)
格付け AAA(100%) AAA(99.9%) AAA(99.97%)

※記事執筆時点

ブラックロックの「SHY」は、次に挙げる「短期国債ETF」のように3年未満がメインとなっています。

投資商品としては、「中期国債ETF」として提供されていますが、他の運用会社と比較してみると実質「短期国債ETF」に近い存在となっています。

米国短期国債ETF

「米国短期国債ETF」は、各運用会社とも1年から3年までに満期を迎える短期債券をメインに保有しています。

ブラックロックの「SHV」は、保有率が中途半端な数字となっていますが、短期債券の保有は全体の4割程度で、残りは現金やデリバティブで運用しています。

SPTS VGSH SHV
残存期間 2~3年(41.04%)
1~2年(58.9%)
0~1年(0.07%)
3~4年(0.2%)
2~3年(42.8%)
1~2年(56.8%)
0~1年(0.2%)
1~2年(0.24%)
0~1年(35.55%)
格付け AAA(100%) AAA(99.8%) AAA(35.79%)

※記事執筆時点

格付けの高い米国債券において金利変動の影響を受けづらい短期債券をメインに保有しますから、大きなリターンは期待せず安定した投資商品としてポートフォリオに加えておきたい銘柄になると思います。

格付け

債券の格付けは、格付け業者によって公表されますが、大きく分けて米国系の「ムーディーズ」と「スタンダードプアーズ(S&P)」の2社による格付けが広く利用されています。

格付けの見方は以下のようになります。

ムーディーズの符号 副符号 S&Pの符号 副符号
適格債 Aaa なし AAA なし
Aa 1,2,3 AA +,なし,-
A 1,2,3 A +,なし,-
Baa 1,2,3 BBB +,なし,-
非適格債 Ba 1,2,3 BB +,なし,-
B 1,2,3 B +,なし,-
Caa 1,2,3 CCC +,なし,-
Ca 1,2,3 CC +,なし,-
C 1,2,3 C +,なし,-

米国債は残存期間にかかわらず、格付けが高くなっていますが、上にご紹介したETFで保有している米国債券はすべて「AAA」という最高ランクであるという意味になります。

「総合債券ETF」

信用度の高い米国の国債だけではなく、民間の会社が発行する社債や「モーゲージ証券」「CMBS」「政府機関債」など様々な債券を保有する「総合債券ETF」というものがあります。

国債だけでは抑えられてしまうリターンが、このようなリスクの高い債券を含む「総合型」への投資によって国債よりも高いリターンを目指すものになります。

SSGA バンガード ブラックロック
SPAB
SPDRポートフォリオ米国総合債券ETF
BND
バンガード米国トータル債券市場ETF
AGG
iシェアーズコア米国総合債券市場ETF
・9割を国債とモーゲージ債と社債で占める
・格付けは7割強がAAAでほぼすべてが投資適格債
・7割強を短期・中期債券で占める
・8割を国債と政府系住宅ローン担保と産業社債で占める
・格付けはすべて投資適格債
・4割を1年から5年までの短期債券
・国債とモーゲージ・パススルー証券と社債(資本財・金融)で9割を占める
・格付けはすべて投資適格債
・7割を短期・中期、3割を長期・超長期が占める

※記事執筆時点

米国債のみのETFより格段に利回りが良くなるわけではありませんが、各運用会社とも米国債のみよりも経費率を抑えているので、債券型を組み入れたい購入側にとっては一番購入しやすいETFかもしれません。

ちなみに、ブラックロックの「AGG」はSBI証券で購入すると、「SBI ETFセレクション」に該当するため購入手数料が無料となっています。

各債券の特徴

■モーゲージ証券(MBS)

「不動産担保証券」で住宅ローンの元本・利子の返済資金が裏付け資産となる証券。
「住宅ローン債権」が「証券発行体」に売却され、「モーゲージ証券」として投資家に販売される。

■CMBS

MBSでも商業用不動産担保証券のこと。

■政府機関債

政府関係機関や特殊法人などが発行する債券。
上のMBSにおいて、連邦政府抵当金庫が発行する「ジニーメイ」や連邦住宅抵当公庫が発行する「ファニーメイ」などは政府機関債でもあり、「FRB(米連邦準備制度理事会)」が購入対象としている。

■国際機関債

先進国が中心となって設立した開発金融機関(世界銀行、アジア開発銀行、米州開発銀行)が発行する債券。

「投資適格債券ETF」とは

「投資適格債券ETF」とは、格付けがBaa以上(S&Pの場合はBBB以上)となる主に社債を中心に保有するETFとなります。

投資適格社債に集中して投資をするETFは少なく、「ブラックロック」から2つの商品が販売されています。

  • iシェアーズ iBoxx 米ドル建て投資適格社債 ETF(LQD)
  • iシェアーズ ブロード米ドル建て投資適格社債 ETF(USIG)

今回の趣旨であった「米国債のみ」では「投資適格債券ETF」は提供されていません。

これら2つのETFは、米国企業の社債の割合を多めにしながら、先進国の社債や新興国の政府機関債も含めた格付けの高い債券を保有しています。

「ハイ・イールド債券ETF」とは

「投資適格債券ETF」とは逆に、格付けが「Ba(BB)以下」の債券を中心に保有するのが「ハイ・イールド債券ETF」になります。

「SSGA」と「ブラックロック」から以下の「ハイ・イールド債券ETF」が提供されています。

  • SPDRブルームバーグ短期ハイ・イールド債券ETF(SJNK)
  • SPDRブルームバーグ・ハイ・イールド債券ETF(JNK)
  • iシェアーズ iBoxx 米ドル建てハイイールド社債ETF(HYG)

「投資適格債券ETF」と投資先は同じように米国を中心とした先進国債券への投資となるわけですが、格付けが低い、いわゆる投機的債券が中心となるので利回りは高めとなっています。

一方で、会社が潰れてしまい債券が満期まで持たずに紙くずになってしまう可能性も高いため、これがハイリスクの理由ともなります。

利回りは高くなりますが、銘柄そのものの価格(株価)は伸び悩む傾向にあるので、「債券型」をポートフォリオに組み込む際に債券型全体の中で「ハイ・イールド債券」のような投機的債券の保有割合には注意したいところですね。

まとめ債券をETFで持つ意味

さて、今回は投資家にとってはやはり安心を感じる「債券」について、主に「米国債券をETFで購入する」とどのような投資商品があるのかを色々と見てきました。

「債券のメリット」と言えば、やはり満期まで保有すれば額面が償還され、その間に定期的に利子を受け取れる点だと思います。(ただし、格付けには気を付けたいところですけどね)

株式ほど大きく下落する局面は多くないので、自分のポートフォリオ内に一部組み込みたい商品ではあるのですが、債券のデメリット部分を考えるとそれをETFで持っておく意味もあるかと思います。

  • 債券型ETFで毎月の分配金を手に入れる(債券の利子は半年に一度)
  • 債券型ETFでいつでも換金できる(債券の途中売却は難しい)
  • 債券型ETFで複数銘柄に分散しやすい(債券を複数で分散すると手間とお金がかかる)
  • 債券型ETFで様々な国の債券を購入できる(新興国債券の購入は日本の証券会社では難しい)

「日本国債」であれば、日本でも簡単に購入できますし満期時の元本保証などもあるのでETFで持つ意味はあまりないかもしれません。

しかし、米国債券やハイ・イールド債券のような購入に手間がかかる債券は、経費率の安いETFを通じて購入し、リスクを分散させながら株式との併用・緩衝として持っておくのも非常に有効な手段となります。

  • この記事を書いた人

宮嶋僚

北海道の道南で小さな会社を経営する兼業個人投資家です。投資をこれから始める人のために分かりやすくそして役に立つサイト運営を心がけています。 どうぞよろしくお願いします。

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